食べ物のにおいと美味しいと感じる情報の記憶

福井大学医学部の村田助教と米カリフォルニア大の五十嵐助教らの共同研究チームが、食べ物の匂いと、それが美味しいという情報が記憶される脳のメカニズムを世界で初めて解明し、世界的に権威ある英科学誌「Nature」電子版に論文掲載(20219月)されました。

脳の快楽物質ドーパミンが、記憶中枢にある特定の細胞に放出され、匂いと記憶を結びつけていた嗅覚の低下が初期症状として知られるアルツハイマー病の原因解明や治療法の開発につながることが期待されています。研究チームは匂いの学習には、脳内で記憶をつかさどる海馬の隣にある嗅内皮質という領域が関係していると予想。嗅内皮質は、場所や空間を把握する能力と関わり、アルツハイマー病の初期に障害を受けることで知られている。一方で、その理由は解明されておらず、嗅覚との関連性も明らかになっていない(海馬:最近の記憶を納めている脳の器官で、物忘れや記憶力の低下を防ぐ際に非常に重要)。

今回の研究成果から「扇状細胞(嗅内皮質にある細胞で神経伝達物質のドーパミンを受け取って記憶を定着化させる働き)の活動を高めることで、記憶疾患の治療につながる可能性もある」と村田助教。今後、嗅内皮質の役割を明らかにし、より効果的な治療法の開発に役立てるため、ドーパミン以外の神経物質の作用などについても研究を続けるとのことです。

たとえば嗅覚を刺激するカレースパイス類の一部やハーブ等アロマのにおい・香りが認知症に効果があるのか否か(現段階では科学的根拠はないですが)、将来的には研究機関等による研究成果が待たれます。スパイスやハーブ類を多用する香りが良く、美味しいと感じるカレーを週1回程度食べ続けた場合、認知症予防あるいは改善において何某かの効果が科学的に証明される時がいつの日か来るかもしれません(直感的には何らかの効果がありそうな感じがします)。