歯周病はアルツハイマー型認知症を悪化させる?

超高齢社会を迎えている日本ではアルツハイマー型認知症患者が増え続けています。2018年に日本歯周病学会会誌に非常に興味深い記事がまとめられていました。その内容を以下に要約します。

近年になって歯周病とアルツハイマー病に関する疫学調査が盛んに行われるようになり、健常者と比較し、アルツハイマー病患者では歯周病原細菌に対する抗体価が有意に増加していることが確認されている。また、アルツハイマー病患者の脳内からリポ多糖(LPS)が検出され、LPSによってミクログリア(脳内で免疫防御を担う)が活性化され、脳炎症およびAβ(Aβはアミロイドベータの略。脳内に蓄積し、アルツハイマー病に重大な影響を与えるアミノ酸ペプチド)の産生・蓄積ならびに認知機能障害を引き起こすことが報告されている。アルツハイマー病モデルマウスの口腔内に直接LPSを投与し、実験的歯周炎を作成。さらに、マウスの認知機能を評価するために新奇物体認識試験を行い、LPS投与群と非投与群間で比較した。その結果、LPS投与群の認知機能が非投与群と比較し、著しく低下していた。また、マウスの脳を解析したところ、LPS経口投与群では非投与群と比較し、マウス脳内のAβ沈着量増加、炎症性サイトカイン(炎症を起こす物質)の産生量増加、LPS濃度上昇が認められ、本研究により、歯周病がアルツハイマー病の病態に与える影響とそのメカニズムの一端を示した。

アルツハイマー型認知症患者の脳内へのAβ(アミロイドベータ)の沈着や老人斑の形成は認知機能障害を発症する15~20年以上前の40歳代前半から始まっている。この年代は我が国における歯周病の発症率が増加する年代と一致することから、同時期の歯周病をコントロールすることでアルツハイマー病発症時期を遅延させたり、発症後の重症化を軽減できる可能性がある。

さらに、これまでの研究により糖尿病がアルツハイマー病のリスクファクター(危険因子)となることが判明しており、また、歯周病と糖尿病の関連性についても相互の相関関係も強く示唆されている。以上のことから,歯周病が糖尿病を悪化させることによってアルツハイマー病の病態を悪化させる可能性も考えられ、歯周病、糖尿病、アルツハイマー病の三者による負のスパイラルが形成される可能性がある。

今後、詳細なメカニズムの解明やヒト介入試験等での検討など、さらにデータが蓄積され両者の因果関係が明確になることによって、歯周病がアルツハイマー病のリスクファクターの一つとして認知されるものと考えられる。

なお、店主は20年以上前より3ヶ月に1回、行きつけの歯科クリニックにて歯の「クリーニング」をしてもらっています。将来、中高年者が定期的に歯のクリーニングをすることが強く推奨され、結果としてアルツハイマー病や種々の生活習慣病の予防につながり、医療費ならびに介護費を大幅に削減できる時代が来るかもしれません。